「後期高齢者医療」と「民意」2

2008/05/05 15:12


 ((1)からの続き)高齢者の怒りが表面化したのは今年春になってから、すなわち、新しい保険証が「後期高齢者」の手元に届き始めてからです。それまでの制度改革の議論では「現役世代の負担軽減」が強く意識され高齢者が切り離されることへの政治・行政の「感度が鈍かった」という評価をよく耳にします。

 しかし、「後期高齢者」の切り離しは今回、政府・政権与党が「確信犯的」に行ったもので「感度」の問題ではありません。

 厚生労働省は今から31年前の1977年、今回の後期高齢者制度と同じ考えかたに基づく「独立型」の制度を提案しましたが、日本医師会の武見太郎会長(当時)の「老人うば捨て山構想」との批判により頓挫しました。この時にできたのが今年3月まで続いていた「老人保健制度」です。

 小泉首相(当時)が「三方一両損」と言って「サラリーマンの患者本人負担を2割から3割へ上げると決定した時(2002年)、自民党の族議員は「現役世代に負担を強いるのなら」と「新しい高齢者医療制度の創設を2年以内に措置すること」を約束させました。

 厚生労働省はその直後、医療制度改革の試案を発表しますが、高齢者だけを集めた「独立型」の制度については、厚生労働大臣(当時)の坂口力氏(公明党)も含め、懐疑的でした。にもかかわらず、2003年の閣議決定では、75歳以上の後期高齢者を切り離す「独立型」の自民党案が採用されました。

 2006年5月、医療制度改革関連法案が衆議院厚生労働委員会で自民・公明両党の賛成多数により可決しました。上記で述べたように、「高齢者の切り離し」は、長い政策論争の末、熱狂的な小泉人気に乗じてネジ込まれたもので、切り離される高齢者への「感度」が鈍かったなどということで済まされる問題ではありません。

 ネジ込んだからにはどこかに無理があるはずです。((3)へ続く)
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