「十二人の怒れる男」

2009/05/31 22:30


 5月21日から正式にスタートした裁判員制度。特集報道やこれを題材とする番組も多いですね。ゆうべも2時間ドラマが放映されていました。後半だけ見ました。吉田康人は先日、たまたまなんですが、法廷劇の名作中の名作と言われている米国映画「十二人の怒れる男」(1957年。シドニー・ルメット監督)をレンタルで観ました。

 17歳の少年が起こした殺人事件に関して陪審員による討論が別室で始まります。誰が見ても有罪と思えたその状況下、ひとりの陪審員が無罪を主張したことから物語が動きます。この討論では、多数決ではなく全員一致で、有罪、無罪が決まります。最初、無罪を主張したのは12人の陪審員のうち 陪審員8番(ヘンリー・フォンダ)のみ。それが、ひとり、また、ひとりと有罪から無罪へと投票を変えていきます。果たして、この陪審員らの決定は?。

 この映画に出てくる評決のポイントは「全員一致」が必要であること。「全員一致」は困難なシステムのように一見思えますが「全員一致」だからこそ討論が行われ見逃されがちなことに光があたります。「多数決」ならこの事件でも有罪があっさり決まったはずです。

 昨晩のテレビ・ドラマでも、我が国の裁判員制度のうち、審理を行う合議体に裁判官も参加し死刑か死刑回避かを判断するためには過半数が賛成しなければならず、かつ、裁判官3人のうち最低1人は賛成しなければならないというシステムが紹介されていました。つまり、裁判官が一致して死刑と判断すれば死刑回避にはできないし、逆に、一致して死刑回避とすれば裁判員の判断がどうであれ死刑にはできないということになります。

 「十二人の怒れる男」は我が国で、名作映画としてだけでなく、米国陪審制度の長所、短所を説明するものとしてよく引用されるそうです。その経験は我が国の裁判員制度へ活かされたのでしょうか?。
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