「あなたのマンションが・・」

2004/10/01 22:59


 山岡淳一郎著「あなたのマンションが廃墟になる日」を読みました。老朽化マンションの建て替え問題は吉田康人がいずれ大きな政策課題になると10年ほど前から悩んでいる問題でもあります。 総務省の調査では、住宅のリサイクル年数は「30年」、木造は「26年」とも言われています。国土交通省が2002年に公表したマンション建て替え事例では、老朽化で再建されたマンションの平均築後年数は「37年」あまりとなっています。我が国ではほぼ30年周期で破壊と新築が行われてきたのです。これに対して、欧米の住宅リサイクル年数は英国「141年」、米国「103年」、フランス「86年」、ドイツ「79年」です。
 マンションはそもそも「30年」で寿命が果てる建物ではありません。著者の山岡氏によれば、経済優先、利権優先でマンションを供給してきた「日本的システム」が「30年」でとどめを刺してきたということになります。そのメカニズムが明らかにされず「30年」寿命という言葉だけがひとり歩きして老朽化に悩まされるマンションが強引に建て替えられれば、それは悲劇の連鎖を生むことになります。
 なぜ、我が国の鉄筋コンクリートマンションは30年少々で壊されてしまうのでしょうか?。山岡氏は、この素朴な疑問から、数々の老朽マンション建て替えの厳しい現場に対する一連の取材を始めます。そして、取材を通じて聞き取った悲鳴、「幻影」から復讐されて上がった悲鳴をこの本にまとめています。
 「幻影」とは、容積率の緩和を進め、あるいは、法律改正までして、建物を短期間に壊し新築して経済を活性化させようとする「日本的メカニズム」を指します。このメカニズムは土地神話の崩壊とともに根拠を失ってしまいました。<<(以下、原文のまま)都市の主役は「住民」なのだ。あるいは「生活」と換言してもいい。「官」が造ってきたまちを、人を中心として再構築する。・・(中略)・・「再生」という言葉を「再開発」の代名詞ではなく、人間を核にした暮らしと環境の「維持循環」へとシフトしてゆく技術が求められる>>。
 この本でも、官僚・役人主義の構造、マンションを建て替えることで儲かる人々の利権の構造を打破し、住民本位の政治・行政の必要性が訴えられています。
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