「亡国のイージス」

2006/11/01 20:37


 一昨日の日曜日、槻友会の総会から帰宅しテレビでやっていた映画「亡国のイージス」(阪本順治監督)を見ました。ロードショー当時、話題になっていたのは知ってたんですが劇場へ足を運ぶ時間に恵まれませんでした。
 海上自衛隊護衛艦「いそかぜ」副長である宮津弘隆(寺尾聰)と北朝鮮工作員のホ・ヨンファ(中井貴一)とが共謀し、イージス・システムを搭載するミサイル護衛艦「いそかぜ」に「グソー」を持ち込み反乱を起こします。グソーは東京を壊滅させる威力を持つ特殊化学兵器です。先任伍長・仙石恒史(真田広之)、一等海士・如月行(勝地涼)、そして、(ホらにそそのかされて反乱に参画した)日本人隊員の良心が、グソー・ミサイルが東京へ打ち込まれるのを阻止できるかどうかというストーリーです。
 原作と比べてかなりトーン・ダウンしている「らしく」この作品に対する評価は分かれているとのこと。例えば、「自信と誇りを失い国家としてのありよう・守るべき形を失った日本(=映画タイトルで言うところの「亡国」)は、守るに値する価値がある国なのか?」という問い掛けに対して、原作では、先任伍長の仙石が強烈に返答し行動している「らしい」。吉田康人は、原作を読んでいませんので、このあたりのことについてはよくわかりません。
 最も印象的だったシーンは、クライマックスで仙石がホを撃つところ。射撃の直前に一呼吸置いたシーンです。その前段で、仙石とともに反乱軍と戦う如月が、投降しつつあった日本人隊員を発見するや否や撃ち殺してしまい仙石から「(「やられる前にやる」ではなく)一瞬考えるのが人間だろ!」と怒られてしまう。しかし、次の場面では一瞬考えてしまったことによってこの如月が腹部を撃ち抜かれてしまうという出来事がありました。
 確かに、我が国は今、自信と誇りを失っているかもしれません。国防以前の問題として守るに値する国家なのか?という問い掛けもわからないでもありません。しかし、だからと言って、愛国心の名の下に「やられる前にやる」的な国防意識が急に芽生えるとしたらそれは危険です。いつまでも考えっ放しじゃダメだけど(笑)、例え腹部を撃ち抜かれようがプライドを傷付けられようが、クライマックスで「一呼吸」置いた仙石のように、いつまでも人間的で思慮深く優しい「日本」であり続けることを望みます。
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